独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 案内されたリビングダイニングは、なんとなく想像していた通り、生活感のない空間だった。

 真っ白な壁、ブラックレザーのソファ、ガラスのローテーブル。スタイリッシュなカウンターキッチン。どのインテリアもお洒落だが、あまり使われていない感じで、不自然なほどきれい。

「まるでモデルルームですね」
「病院に泊まっちゃう日も多いからね。ほら、座って。ご飯、なに頼むか決めよう」

 ソファを勧められたが、私はまた接近されるのではと警戒し、一番端に腰を下ろす。小田切先生はそんな私を見て、声を殺したようにくつくつと笑った。

「そういう無駄な抵抗がかわいいよね」

 そう言ったかと思うと、つかつか歩み寄ってきた彼は私のすぐそばに腰を下ろし、悪戯っぽい目で私の顔を覗く。

「男は逃げられると余計追いかけたくなるんだよ?」
「し、知りませんよ、 そんな男性特有の習性……」

 そんなことより、近いですって。見ないでください。

 脈拍が、血圧が、体温が、呼吸が。健康な人のそれとはどんどんかけ離れて、体がおかしくなっちゃう……。

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