独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
それでも彼が顔を近づけてくるので、思わずぎゅっと目を閉じる。すると、鼻先にふっと笑った彼の息がかかった。
「ごめん、意地悪しすぎた」
言葉と同時に、頭の上にポンと彼の手がのった。
ゆっくりまぶたを開けると優しく微笑む彼の顔があって、胸がきゅん、と音を立てる。
……な、なに、きゅんって。まるで小田切先生の笑顔にときめいたみたいじゃない。
「さて、 なにしよっか。和食? 洋食? 中華?」
「べ……別に、なんでも」
「じゃ、俺は中華がいいな。うまい店知ってるんだ。肉料理と野菜と……あ、飲茶も頼もっか」
楽しげにスマホを操作する彼の横顔を見ながら、私は胸の内で自分と対話する。
どうして、仕事中みたいに冷静でいられないのだろう。どうして、見つめられると困るのに、こっちを見ていない時の彼から目が離せないのだろう。
「愛花先生、聞いてる? お腹すいてるんだよね?」
……すいてた。たぶん、病院を出た直後までは。
だけど今は……胸に大きな塊を飲み込んでしまったみたいに、苦しくて。食欲なんて、どこかへ行ってしまったみたい……。なんなの、どうしたらいいの、これ。