独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
チョコをひと粒つまんで愛花先生に差し出すと、彼女は真顔のまま「ありがとうございます」と受け取り、チョコを口に入れる。しかし、咀嚼している間もその表情は変わらない。
……珍しいな。悩む暇があったら行動するタイプだと思っていたけど。
チョコを食べながら彼女を観察していると、不意に彼女がまっすぐ俺を見た。
「あの」
「ん?」
しかし、しばし目を合わせたのち、首を横に振る。
「……いえ、やっぱりなんでもないです」
「え、言いかけて止めないでよ。気になるんだけど」
愛花先生はちらっと上目遣いで俺を見た後、医局内で仕事をする数人の医師たちの様子をうかがい、「ここではちょっと……」と気まずそうに言った。
え、なにそれ。もしかして、俺とのプライベートな話?
勝手に甘い期待を抱く俺に、彼女が「廊下に出ましょうか」と告げる。
廊下? もっと人目につかない場所じゃなくていいのか?
そんな心配をしながらも、立ち上がった彼女の背中を追い医局を出た。