独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「で、どうしたの?」
忙しなく医師や看護師たちが通り過ぎていく廊下で、向き合った彼女に尋ねる。
今夜食事しようとか? 今度の休みにデートしようとか?
冷静を装いつつ、心の中では興奮気味の犬のごとく尻尾を振りまくっていたのだが。
「小田切先生は……自分がもうすぐ死ぬかも、となったら、私を遠ざけますか?」
……うん? なんだその甘くない、というかむしろしょっぱめの話は。
「なんでそんなこと聞くの?」
「ある患者さんの心理を知りたいのですが……同じような境遇の人があなたしかいないので」
患者の心理。……なんだ、仕事の話だったか。でも、愛花先生が患者の考えを知りたがるとは珍しい。
彼女は基本的に患者のプライベートに関してドライで、その性格はある意味医者向きだと思っていたのだが、なにか心境の変化があったのだろうか。
疑問に思うことはあれど、一応彼女の問いかけを真面目に考えてみる。
「俺がもし近いうちに死ぬかもってなったら……そうだな。たぶん、遠ざけるどころか、必死できみの心に自分の印象を残そうと足掻くかな。死んだ後も、愛花先生の胸の中でずっと生きていられるように」