独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
若いナースが俺の皿を手に取り、甘ったるい声で「お料理取りますよぉ」と気を利かせる。
「ありがとう」と愛想笑いをしつつ隣に座る愛花先生の様子を窺うと、ビールをひと口飲んで小声で「まずっ」と呟いていた。
空気を読まないその行動がおかしくて、クスクス笑いながら尋ねる。
「まさかとは思うけど、ビール初めて?」
そういえば、彼女の自宅にお邪魔した時も、お寿司と一緒に出された飲み物はお茶だった。
「ビールというか、お酒全般、飲んだことがありません」
「えっ、嘘」
「嘘じゃありません。避けてたんです。アルコールはくも膜下出血の危険因子になりますから」
冷静に説明され、納得すると同時に、やはり彼女は真面目だなと思わされる。
職業柄、酒をやめろと言ってもやめない、やめられない患者がいかに多いか、いつも目の当たりにしているから。
「なるほど。でも、ずっと避けてたのに今日は飲むんだね。……彼の歓迎会だから?」
テーブルの向かいで、新人らしく次々グラスにお酌されて恐縮している西島に視線を投げ、少し棘を含ませた声で聞いた。すると彼女は、こくっとまたひと口ビールを飲んで言う。