独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「ありがとう」

 それでも笑顔を張りつけてお礼を言うと、ナースが急に声をひそめて言った。

「ところで、ちょっと噂で聞いたんですけど……先生、ご結婚なさったって本当ですか?」
「え? ああ……」

 なんと答えようか迷い、横目で愛花先生の表情を窺う。しかしちょうどその時、彼女の隣ににっくき西島がやってきて、「愛花さん、飲んでますか?」と、なれなれしく彼女にお酌した。

 彼女の瞳は西島の方に向いてしまい、さっきまで漂っていた甘い空気が、急に遮断された気がした。

「聞いてますか? 小田切先生」
「あー、うん。したよ、結婚」

 顔を見合わせたナースたちは瞬時に落胆の表情になり、さらに探りを入れてくる。

「どういう女性なんですか? やっぱり家柄のいいお嬢様とか……?」
「いや、下町の一般家庭で育ったごく普通の女性」
「お仕事は?」
「同業者だよ。すごく頑張り屋の先生なんだ」

 自慢げに語ったその時、愛花先生がこちらを振り向いた。
 
 禍々(まがまが)しいオーラを纏い、〝余計なことを言うな〟とけん制するような、じとっとした眼差しを送ってくる。

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