独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「……あれ、愛花先生は?」
俺は一瞬返答に悩んだが、適当な口実でごまかすことにする。
「帰りました。ほら、愛花先生ってご実家にお住まいなので、あまり遅くなると親御さんが心配するそうで」
「ふうん。……残念、もっと話したかったのに」
蓮見先生が意味深に呟き、いつの間に頼んだのか、ウィスキーのグラスを傾けてカランと氷を鳴らした。
この人は、女も好きだが酒も好きで、どんなに仕事が忙しくても毎日のように飲み歩いているという噂だ。
そのくせ、病院で二日酔いだったり、眠気を催している姿は見たことがない。よくそんな体力があるものだと、いつも不思議に思う。
「まさか、狙ってるんですか?」
冗談っぽく問いかけると、蓮見先生は目を細めて小さく笑う。
「いや、もちろん本気じゃないけどさ。最近妙にかわいくなったな~と思って」
そりゃ、かわいくなったさ。でもそれは、俺の存在があってこそだ。
と、真実をぶちまけてしまいたいが、愛花先生が烈火のごとく怒るであろうことが想像できるので、「そうですかねえ」と生返事をするしかない。