独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 微妙な沈黙が流れたが、それを破るように、西島が突然俺と蓮見先生の間に割り込んできた。

「あのっ、先生方、愛花さんは?」

 西島の口から〝愛花さん〟という言葉が出るだけで、胸の内にドロドロとした感情がわいた。

 お前には関係ない。そんな言葉を、すんでのところで飲み込む。

「帰ったってさ。もしかして、きみも彼女狙いなの?」

 蓮見先生が興味津々に尋ねると、西島は「いやぁ」とはにかんで、照れ隠しのように、ふわふわした自分の髪を撫でた。

「狙っているというか、昔からずっと憧れの人で……。今回偶然にも職場が同じになれたことが本当にうれしいんです。だから、今日は少しでもお近づきになれたらと思ったんですけど……」

 嫉妬心のせいか、西島の謙虚な言い方が、やけに鼻についた。

 憧れなんて嘘だ。どうせ、お近づきになれたらそこで下心を露わにするに決まってる。

「それは残念だったな。しかし、彼女はクールだぞ。そんな消極的じゃモノにはできない」
「じゃ、どうすれば……?」

 ひとりぶすっとする俺の横で、西島と蓮見先生は妙に意気投合して会話を続けている。が、どうも雲行きが怪しい。

< 86 / 224 >

この作品をシェア

pagetop