小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました

「……確かめなきゃ」

「は?」

「琉菜! いや、ローレン! 用事を思いついたから行くね。今度ゆっくり話しましょう。お茶会に招待するから必ず来てね」

「ちょ、リン……」

 私はローレンの返事も待たずに走り出した。
 上学年のクラスに行って尋ねたら、レオはすでに帰ったと言われる。それで、私も迎えの馬車に乗り、昼食をはしたないと言われる勢いで食べ終えると、侍女のエリーについてきてもらって、すぐに王城へと向う。完全に忘れていただけだけど、入城許可証を返してなくてよかった、と今更ながらに思った。


 到着するやいなや、エリーを置いて私は駆け出した。
 制服のまま城内を走り回っていたら、おじさま貴族たちから咳払いをされる。
 ああ、城内で走っちゃいけないんだっけ。いやでも、こっちだって緊急事態だっての。
 一応、早足に切り替えたが、気が焦る私の足並みは競歩並みに速い。使用人たちが何事かと目を丸くしている。

「あれ、リンネじゃないか。どうしたんだい?」

 途中でクロードに出会う。彼は分厚い本や紙の書類を小脇に抱えて移動途中のようだ。私は行き過ぎてしまった足を戻しクロードに駆け寄る。

「クロード! レオはどこ?」

「レオなら、先ほど帰ってきたのは見たけれど。今は着替えているところじゃないかな。今日は国王様の執務の手伝いがあるはずだから、すぐに執務室に行くんじゃないかな」

「じゃあ、部屋に行ってみるね!」

「あ、リンネ……行っちゃったか」

 相変わらず淑女らしいとは言えない早歩きで、私はレオの部屋に向かう。

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