小説世界に転生したのに、八年たってから気づきました
「ふたりとも……何してるんだい」

「誰だ!」

 咄嗟に、レオが私を抱き込んで守る体勢を取る。裸の胸に頬が押し付けられる形となり、さすがに私だって赤面する。
 レオこそ恥じらえよと、ちょっと思ってしまった。

 だが声の主はクロードだったようで、レオは直ぐにホッとしたように手を離した。

「なにをやってるんだい、レオ。いくら婚約者だからといって……って、リンネ、どうした? 涙目じゃないか」

 クロードが私の顔を見て、慌てて寄ってくる。レオもそこでようやく私の目が潤んでいることに気づいたのか、「待て。襲われたのは俺の方だぞ?」と弁明しだした。

「クロード。レオの体が……」

 魔法陣のことを言おうとしたら、クロードは苦笑した。この反応をみるに、クロードはとっくに知っていそうだ。

「ああ。バレちゃったんだね。この魔法陣のこと」

「知ってたなら、どうして教えてくれなかったの?」

「レオに止められてたんだよ。知ったところで、どうこうできるものじゃないからね。魔法陣を描き出したのは二年前くらいからだけど、残念ながらこの魔法を止める方法も、魔法陣を消す方法も見つかっていないんだ。心配かけるだけなら教えない方がいいって」

 なんだと? 
 私は思わずレオを睨む。

 たしかにできないかもしれないけれど、だったら心配くらいさせてくれたっていいじゃないか。なにも知らずに呑気に笑っていた自分が、なんだかとても嫌になる。

< 89 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop