センチメンタル・ジャーニー Ⅱ ~俺が本当に守りたい人

土曜日の午後 待ち合わせた カフェに

俺が 入っていくと カンナは もう来ていた。


「久しぶりだな。元気か?」

「うん。奏斗から 呼び出されるって 初めてじゃない?」


カンナは 勘違いしているのか

笑顔が いつもより 明るくて。


「うん。今日は カンナに 報告があって… 俺 結婚したんだ。」

俺が 一気に言うと カンナは 

一瞬 ハッとした目で 俺を見た。


「へぇ。おめでとう。この前の人?」

「そう。葉月。」

「いつ 結婚したの?」

「入籍は クリスマスにしたけど。結婚式は 4月だよ。」

「そうなんだ。結婚式 私も 招待してくれる?」

カンナの言葉に 俺は 静かに首を振る。


「カンナ。俺 これからは カンナに何かあっても 助けられないよ。」

「どうして!?」

「俺は 葉月だけを 守るって決めたから。だから カンナ。もう 俺に 電話しないでほしい。」

「何で 急に そんなこと 言うの?彼女に そう言えって 言われたの?」

「まさか。葉月は 俺が カンナを 助けに行くこと ずっと知ってて。それでも 俺に 付いて来てくれたんだ。そんな事 言わないよ。」

「じゃ どうして?」

「俺が 決めたんだ。俺は 葉月だけを 全力で助ける。だから もう カンナのことを 助ける余裕なんか ないんだよ。」

「だって。彼女は 別に 何も困ってないんでしょう?」

「困ってなくても。いつでも 葉月の力になって。葉月を 楽にしたいからね。」

「へぇ。奏斗 彼女に ベタ惚れなんだね。」

「うん。葉月は すごく良い子だから。俺には もったいないくらい。」

「別に いいけど… それに 私 そんなに年中 奏斗を呼んでいたわけじゃ ないじゃない?」

「月に1回でも 年に1回でも 同じことなんだよ。カンナに 依存してほしくないんだ。」

「はっきり言うのね。私 奏斗に 依存なんかしてないわ。」

「それなら いいんだけど。」


カンナは 葉月のことを 彼女と呼んで

一度も 奥さんと 呼ばなかった。


そこに カンナの 意地を感じて 

俺は 密かに ため息をついた。







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