水曜の夜にさよならを
「俺だったら、好きな子がへばりながら笑ってんのを見るのは最悪の気分だね。美晴はどう?」
「どうって?」

「相変わらずあほだねえ、おまえ」
「直哉に言われたくないんだけど」

 久しぶりに会うというのに、失礼なやつだ。けれども直哉が来て、ビールを飲みながら言い合いをしているうちに、少しは気力を取り戻せたような気がした。

 自宅に帰ると、わたしは真っ先に鏡に向かった。

「ほんとだ、酷い顔」
 メイクが浮いて、はがれかけている。ここ二週間、手入れを怠っていたぶんのツケか、ニキビも隠しきれなくなっている。樹に言われたときよりも悪化しているかもしれない。

 まずは自分を立て直そう。男友だち二人から、指摘されるほどの肌荒れをどうにかしたい。
翌日わたしは会社帰りにスキンケア用品を一式買った。不規則な生活をあらためて、食事にも気を遣うようにした。

 ひと月経って悩みだったニキビが治まってくると、心の調子も整ってくる。
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