水曜の夜にさよならを
 真夏の公園で放置したら死んでしまうと、塾までダンボール箱を運び、先生に怒られながらもらい手を探した。そのときに仔猫を引き受けてくれた五人の塾生と、水曜日はそれぞれの猫について報告をする日にしようと約束をした。

 学生の頃は毎週水曜日には集まって、遊んだり、ときには勉強を教え合ったりし、就職してからはそれが仕事帰りの飲み会になってと、形を変えながら続けてきたが、二十五を過ぎた頃からメンバーがぱらぱら抜けていった。転勤、結婚、理由はいろいろ。仲良し六人組だったわたしたちも、今は三人だ。

 待ち合わせの居酒屋に入ると、樹の後ろ姿が見えた。テーブルの上に泡の減ったビールジョッキと一緒に、レモンサワーが置かれている。

「直哉来てないんだ?」

 声をかけると樹は振り返った。湿気にも負けない真っ直ぐな髪。涼しげな一重の目。羨ましくなるくらいきれいな肌だけれど、残業続きか、目の下にはくまができている。
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