水曜の夜にさよならを
「美晴に話したいことが、たくさんあるんだけど」
「わたしも」

 樹が何か言おうとして、足を止めたとき、鞄の中でスマートフォンが二度鳴った。わたしたちは目を見合わせた。

 母だろうか。取りだしてみると、直哉からメッセージが連投で送られてきていた。

『なあ、今どんなかんじ? 可愛くなったって褒めてもらえた?』
『ちょろかっただろ、樹は昔から美晴のワンピ+ブーツが好物だから(笑)うまくいったんならおまえ、俺に肉おごれよ』

 画面を覗き込んだ樹が、ぷっとふき出した。

「借りは早いうちに返しておくか。今から直哉のこと呼んでいい?」
 頷くと、樹はわたしのスマートフォンでそのまま返事を打ち始めた。ほんとうは二人でゆっくり話がしたかったけれど仕方ない。

 公園に寄ってから、直哉と合流するために駅まで出ることになった。歩いていると、樹の手がわたしの手に触れた。壊れものを扱うみたいにそっと包み込まれて、苦しいくらいに鼓動が速くなる。
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