水曜の夜にさよならを
「今度の土曜は早い時間に集合しますか。たまにはどこか違う場所でも行ってみない?」
斜め上からうわずった声が落ちてきて、わたしは横顔を見上げた。精一杯なんでもないようすを取り繕った樹を見たら、ばかみたいに緊張しているのはわたしだけじゃなかったのだと、笑みがこみ上げてきてしまった。
深い緑の香りをのせて、風が通り抜ける。頬の熱は依然冷めそうにない。
「じゃあ樹、来週は何時にする?」
大切なものを二度と離さないようにと、わたしは彼の手をぎゅっと握り直した。
了
斜め上からうわずった声が落ちてきて、わたしは横顔を見上げた。精一杯なんでもないようすを取り繕った樹を見たら、ばかみたいに緊張しているのはわたしだけじゃなかったのだと、笑みがこみ上げてきてしまった。
深い緑の香りをのせて、風が通り抜ける。頬の熱は依然冷めそうにない。
「じゃあ樹、来週は何時にする?」
大切なものを二度と離さないようにと、わたしは彼の手をぎゅっと握り直した。
了


