水曜の夜にさよならを
「うちのムギなんて、いまだに階段かけずり回ってがちゃがちゃやってるのになあ。兄弟猫なのになんでこんなに違うんだろ」

「やっぱり飼い主に似るんだな」
「はい?」

「美晴は何食べる?」
 反論しようとするわたしをさらりとかわし、樹はメニューを開いた。

 仕事、ときどき愛猫の話。

 樹は直哉のように大騒ぎはしないし、あまり自分の話もしない。話題がくるくる変わっていく三人でのねこの会が、ストレス発散にはうってつけだと思っていたが、じっくり話を聞いてもらったほうが、実は心が落ち着くのだということに、最近になって気がついた。二人きりのねこの会、寂しいけれどこれはこれで気に入っている。

 わたしたちは食事を終えると、ほろ酔いのままバス通りを歩き始めた。
 駅から自宅まで徒歩十分強。大通りを挟んでいるから小、中学校こそ一緒にならなかったけれど、わたしと樹の家は歩いて五分くらいの場所にある。

「あーあ、明日しんどいなあ、また朝からミーティングだよ。早く出社した分早く上がっていいからって言われても。朝の一時間のつらいこと」
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