第一王子に、転生令嬢のハーブティーを II
四年前なら、アリシアもあのカフェに通い始めてそう経っていない頃だ。
さすがに客のことを全員覚えているわけではない。だが、アリシアくらいの歳の客はほぼ見たことがない。まして繰り返し通っていたような人など……。
……いや、そういえば一人いた。アリシアの淹れるハーブティーに妙に興味を示していた年上の少年が。
通っていたといっても、ほんの一時期のことで、顔も思い出せないが、アリシアその少年のことを確か──
「『イルさん』って呼んでいた……」
ゾクリと鳥肌が立つ。色々と繋がった気がした。
そうだ。あの少年をイルさんと呼んでいたんだ。それならやはり……。
「思い出したのか。そうだ、それが私だ」
イルヴィスの声がいくらか明るくなる。
「『アリア』という少女の正体が伯爵家の令嬢であると知った時は驚いたな」
「わ、バレてたんですね」
街に出る時はお忍びなのだが、そういえばリリーにも正体がバレていたし、自分で思っているほど上手く忍べていなかったのだろうか。
だが、そんなことより。
「では、その頃からその、わたしのことを……」
「そうだな。好きだった。だが、あくまで庶民に身をやつしている貴女に惹かれているのだと思っていた」