【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―
「来て⋯⋯くれたのか」
信じられないとでも言いたげな、また安心したような小さなつぶやき。
濃いサングラスは表情を隠していて、なにも伺えない。
どんな顔してるんだろう
「ですが、今からお帰り⋯ですよね」
まさかここで会うとは思わず戸惑っていた私は、サッと社長の全身に視線を走らせた。
手には上着とオシャレな通勤カバンを抱えていて、何より容姿をカムフラージュしているということは、退勤するところに違いない。
⋯⋯遅かったかな。
「――――」
「――――」
帰らないといけないのに、なぜかそこから張り付いたように動けなくて、誰もいないエレベーターホールで向き合ったまま何も言い出せなかった。
そして社長も何も言い出さず、私の腕を掴んだまま、その美しい瞳で私を見つめたまま、その場から動こうとしなかった。
チン⋯⋯と、他のエレベーターが到着する合図が聞こえる。
そこで私たちは現実引き戻されたかのように、ハッと意識を戻す。
「とりあえず、出よう⋯⋯」
ぎこちなく社長はそう言うと、サッと玄関口へと歩きだしてしまい、私も慌てて後ろに続いた。