青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「なんてな。……もういい時間だし、送ってく」
ふっと目線を緩め、私の手首を離したかと思えば、上体を起こすと同時に私の体も抱き起こした。
時計は二十一時を指している。たしかにいい時間だ。
ソファに座ったままぼんやりしている私を横目に、彼はもうコートを羽織って準備万端。その姿に私も慌ててバッグを手に持ち、立ち上がる。
廊下に出て部屋の鍵を閉めたテンちゃんは、ごくごく自然に私の手をとり、にこっと微笑んだ。
そんな些細な仕草にもドキリと音を立てる私の心臓。
エレベーターに乗り、地下駐車場まで行くと、昨日も乗せてもらった黒の車が見えた。
…さっき、なんだかすごく恋人っぽい雰囲気になったはずだけど、気のせいだったのかな、と自分の感覚を疑うくらい、テンちゃんは何事もなかったかのように黙って車を走らせる。
「なぁ、みやび」
「…なんですか?」
彼の平然とした横顔を見つめていると、妙に改まった様子で私を呼んだ。
その声色は固く揺れて聞こえ、私は反射的に身構える。
「俺がどんな奴でも、結婚してくれるか?」
へっ!?け、結婚…?
そ、そういえば昨日、結婚を前提に、って言ってたな。