青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
何を改まってそんなこと言うのか。
街の灯りに照らされる彼の顔からは、真意を掴み取るのが難しい。
ただ、垣間見える横顔は、どこか寂しそうな、至って真剣な顔。
いつものように笑ってほしくて、私も真剣に答える。
「テンちゃんがどんな人でも、け、結婚、しますよ」
結婚と、口に出すのはむず痒い。
それでも彼は、私が言うとこちらをチラッと見やり、ふっと笑った。
やっぱりどこか寂しそうだったけれど、
私はその笑顔を見られただけで満足してしまった。
「ありがとうございました。おやすみなさい」
マンションの前でテンちゃんの車から降り、小さく手を振ると、彼も車から降りてきた。
寒いのにわざわざ降りてこなくていいですよ、と言うと、みやびが足りないとか言いながら、私を抱きしめた。
外で、誰が見てるかもわからないのにと思いながらも、彼の体温が直接伝わり、外の空気に触れて冷えた体も温まった気さえするのだから、頬が緩むのは隠せない。
ほんの数秒抱き合っただけなのに、心がぽかぽかしてくる。
彼は、「みやびが風邪ひいたら困るから、今日はこれで我慢する」と呟き、私をマンションに入るよう促した。
私からすれば、熱で倒れたことのあるテンちゃんの方が心配なんだけどね。
心の中で突っ込みつつ、エントランスから彼にもう一度手を振り、エレベーターへ向かった。