青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
「お願いだから、蒼介と別れて」
星莉さんの瞳と声は揺れていた。
本当は彼女だって、こんなこと言いたくなかったはず。
私さえいなければ、彼女が言いたくないことを言う必要もなかったし、星莉さんの長年の想いも叶うかもしれない。
そしてテンちゃんは、立派な院長になるんだろう。
絶対、カッコいいよなぁ。
星莉さんと並べば、そのカッコよさも倍増するよね。
私は彼のカッコよさを拝むくらいだったんだから、よりカッコいい彼がみられるなら、いいじゃない。
そう自分に言い聞かせ、一度でも小さく息を吐き出した。
「わかりました。別れます。早い方がいいですよね。今すぐ…」
「ま、待って。明後日、印鑑を持ってうちに来てほしいの。蒼介に言うのは、それからにして…」
あまりに潔い私に一瞬驚くと、星莉さんは眉を下げて言った。
さっきまでの逞しい女性はもういなくて、スマホを取り出そうとする私の腕をやんわり掴む彼女の手は震え、私を見据える瞳は切なげに揺れていた。
こんな顔を見てしまっては、彼女の言う通りにしようと素直に思えてきてしまう。
私がテンちゃんと付き合うことで、どれだけ彼女を苦しめ、彼の未来まで壊そうとしていたのかと思い知った。
心の中でごめんなさいと嘆き、彼女の揺れる瞳をしっかり捉え、頷いた。
印鑑を持ってきてほしいなんて、思い当たることは一つしかない。
私は今一度、自分を奮い立たせた。
彼に二度と会えなくなる覚悟を、決めた。