青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~



「悪いですって!一人で帰れます!」


慌てて声をかけたけど、「うるせぇな俺は腹減ってんだよ」とぼやきながら処置室を出ていってしまった。


ものの五分で戻ってくると、カゴに入っていた私のバックを掴んで去っていこうとする。
バックを人質にとられたようで、私は仕方なくテンちゃんについて行くことにした。

仕方なく、なんて言ったけど、本当は嬉しくて堪らないとは、とても言えない。


やってきたのはベリーヒルズビレッジのショッピングモール、タカノミヤの一階のラーメン屋。
豚骨ラーメンが美味しいと有名で、一度行ってみたいと思っていたところに、思わぬ形で来ることになった。

夜中だから、まさかタカノミヤのラーメン屋だとは思わなかった。

でもよく考えたら、五手の神器の王子が駅前のラーメン屋に行くとは思えない。


暖簾をくぐると、店内は貸切状態だった。
注文した豚骨ラーメンはすぐにカウンターに運ばれてきて、豚骨のいい香りが鼻をくすぐる。


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