青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
お昼時、オフィスの皆は外にお昼を取りに行った。
私はと言うと、昼休憩も惜しんで仕事中である。浪川部長の監視の元。
今朝コンビニで買った菓子パンにすら手をつけられず、カタカタとパソコンを打ち続ける。
目が疲れて伸びをすると、前を向けば嫌でも見えるはずの部長がいない。
と、後ろに嫌な気配を覚える。
「―みやびちゃん」
薄気味悪い声に振り返ると、さっきまでの鬼のような顔とは打って変わって、浪川部長が私の首筋に顔を埋めてニタニタしている。
ぞっと血の気が引くのを感じていると、今度は部長の腕が腰付近に触れる。
うそ…セクハラ?
まさか…だって私…童顔だし…?
「俺なぁ〜、みやびちゃんみたいな〜幼い顔の子、好みなんだよなぁ〜」
そんな趣味の人がいるとは、今の今まで微塵も考えたことがなかった。
完全に油断していた。不覚だ。
今まで散々怒鳴り散らしてきた人とは思えないほど甘ったるい声音が、耳元に響く。
嫌な鳥肌が止まらない。
体温が抜けて体は冷たくなる。
気持ち悪い。怖い…助けて――
叫ぼうにも誰もいないオフィスで叫んだところで意味が無い。
どうにか浪川部長が立ち去ることを祈るも、それどころかどんどんエスカレートしている。