青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~
ベリーヒルズビレッジから徒歩五分ほどのところにある、卵が特売のスーパーで買い物をした。
食材は全て安くて新鮮なものを見定めて選んでいて、お一人様一点限りの卵は二パックゲット。
買い物に来ていたお母様方は、自分たちと同じように安いものを追求するイケメンに、私と揃って開いた口が塞がらなかった。
両手にどっさりレジ袋を抱えて満足気に息をつくテンちゃんを、私は黙って見つめる。
主婦だこの人。
本当に御曹司なのか疑ってしまう。
「じゃあ取り敢えずみやびの家行くか」
そう言って歩き出すので、私は慌てて追いかける。
手に持つ食材たちをどちらか受け取ろうと手を伸ばすと、「みやびは転ばないように歩いてろ」と笑われてしまった。
憎まれ口をたたいているけれど、それが優しさだと分かっているから「ありがとうございます」と返す。
電車は朝より空いていて、端の席に並んで座れた。
私の部屋で、買ったものを冷蔵庫にしまっていく。
元々何も入っていない冷蔵庫だから、見られて恥ずかしいものもないし、むしろ
手馴れた様子で冷蔵庫に綺麗にしまう彼に、もう驚きを通り越して関心してしまった。
テンちゃんは自分の分と一緒にお金を払ってくれて、なんとそのまま自分が持つつもりだったらしいが、さすがにそれはと押し切ると、今度はスマホの電卓とレシートを手に精算し始めた。
目が追いつかないスピードで終え、間抜けな顔の私にスマホを見せる。
「みやびのは俺より少ないからこんだけ」と。