Sweet break Ⅳ
8月に入り、梅雨明けと同時にうだるような暑さの毎日が続く。
モバイル電子機器に付属するあらゆる商品を企画販売している我が社にとって、この時期、年末のクリスマス商戦に向けて、新規商品の開発に躍起になる頃。
社の財務を動かす関君達の業務は、すべての部署に精通していて、事前相談や各種会議に引っ張りだこで、多忙をきたす。
それに比べ、同じ総務課内でも私や未来君の所属している庶務係の方は、いつも通りの平常運航。
『朱音さ~ん』
総務課に続く通路の途中で呼び止められて、振り返ると、未来君が走ってやってくるのが見える。
見た目はすっかり大人男子なのに、まるで投げたボールを取ってきた子犬みたいに懐いてくる。
『お疲れ様』
『ハァハァ…やっと追いついた…え~っと…営業4課の…坂本さんに、フゥ…書類…届けました』
『うん、ありがとうね、っていうか、走らなくても、全然大丈夫だよ』
『…ちょうど…上から…朱音さんの姿…ハァ…見えて…』
『あはは…とりあえず、落ち着いて。深呼吸しよう』
『…ハイ』
ビル内の空調はよく効いていて、外の暑さが嘘のように快適な空間なのにも関わらず、未来君の額には、薄っすら汗が滲んでる。