転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
サマラは照れたように「へへっ」と笑うと、掴んでいたディーの腕を抱きしめて身を寄せた。
ディーは「……うっとおしい」と吐き捨てたものの、腕をほどくような真似はしない。どうやら機嫌の修復は完了のようだ。

(私ってこの二週間でけっこうディーの扱いがわかってきたんじゃない?)

二週間前はほぼ他人だったことを思えば、今の状況をサマラは自画自賛したいと思う。やっぱり乙女ゲームマスター(自称)の肩書は伊達じゃない。

そうこうしているうちに馬車は目的地に着いた。窓の外は市場前の広場のようだ。

「サマラ」

席から立ち上がろうとするサマラに、ディーは懐から何かを出して握らせた。

「万が一のためにポケットにでも入れておけ」

「え?」

なんだろうと思って手のひらを開いて見ると、なんと茶色くひからびた小さなドクロが鈴なりになったものだった。サマラは「ギャッ!!」と叫んで思わず放り投げそうになる。

すんでのところでディーの手で手ごと包まれ投げることはしなかったが、サマラは顔を青ざめさせてブンブンと首を横に振る。こんなものを握らせないでほしい。

「落ち着け。これはキンギョソウの種さやだ。見た目は不気味だが災厄から守ってくれる力がある」

「き、キンギョソウ……?」

そういえば春になると庭園に赤やピンクの花が咲いていた気がする。興味がなかったせいで、こんな不気味な種さやがなるとは知らなかったけれど。

「街は人が多い。悪いことが起きないとも限らない。お守りだ、持っていろ」

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