転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ディーの心遣いにサマラは感激した。一緒に出掛けてくれただけでなく、身を案じてお守りを持たせてくれるなんて。もはやこれは普通の父子関係にまで達したと言っていいのではないだろうか。

「あ、ありがとうございます。おとーさま」

しかし親心はありがたいものの、やっぱりこの不気味なお守りは投げ捨てたい。植物の種さやとわかっても、ドクロにしか見えない。お守りというより呪いのアイテムだ。

サマラはなるべく手のひらの中身を見ないようにして、キンギョソウの種さやをスカートのポケットに入れた。ポケットの中からケラケラとドクロの笑い声が聞こえるような気がする。

「花でも加護の力は同じなんだがな。あいにく今はそれしか取れない。我慢しろ」

馬車を降りるときにディーが言った言葉を聞いて、サマラは今が春でないことを心の底から残念に思った。



今日の外出の目的は、鉱物屋へ行くことだそうだ。
なんでもディーの行きつけにしている鉱物屋がこのメヴィアの市場街にあるという。

(さすがに鉱物は屋敷の庭じゃ採れないもんね)

鉱物もまた魔法の研究や道具の精製には欠かせないものだ。特に地の精とは切っても切れない深いかかわりがある。

「店主と話をしてくる。サマラはカレオと一緒にその辺を散歩してこい。カレオ、頼んだぞ」

そう言って、ディーは市場の大通りから逸れた裏道へと入っていってしまった。魔法研究所で使う分も発注するので、時間が掛かるらしい。

「それじゃあ俺たちは市場の見学にでも行きますか」

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