カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「今日は、花火大会だったんですね」
「うん。一緒に屋台をまわるのも楽しそうだと思ったんだけど、空調の効いた船の上でふたりきりで花火を眺めるのも、大人だからこそできる楽しみ方かなって」
浴衣を着て並んで、提灯の灯る屋形船から花火を見ている。この趣深い空間が、なによりも幸せだった。
日本酒のおちょこを持った千里さんが、にこりと表情を緩める。
「今日のデートはどう?」
「すごく楽しいです。屋形船に乗ったのも、お酒を飲みながら花火を見るのも初めての経験でした」
「ははっ。よかった。喜んでくれて、俺も嬉しいよ」
飾らない笑顔は、ふたりきりのときにしか見せない特別な表情だ。
こんな温かい気持ちで彼の隣にいられるなんて、お見合いした日には想像もしていなかった。
こつんと肩に頭を乗せられる。
酔ったのではなく、甘えられているのだと察して緊張していると、低く柔らかい声が耳に届く。
「桃さ、親父に会いに行っただろ」
「ご存知だったんですか」
「親父から電話があったんだ。『お前の嫁さんが大量のプレゼン資料を持って店に来た』って」