カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
遡ること一週間前、私は美澄屋の本店にいた。
正式にアポを取って訪ねたのは千里さんの父、大旦那だ。義理の娘の来訪を気前よく迎え入れてくれたが、こちらは世間話をしに行ったのではない。
『電話でもお伝えしましたが、この資料を見ていただけませんか』
それは、和カフェに関するデータだった。
美澄屋が事情提携してからの予約の伸び数と、着物のレンタルの数、そして客層と収支、再来店につなげるための次回割引制度や予約をしてくれたお客さまの匿名アンケートをまとめたものである。
和カフェの件で大旦那様からお叱りを受けたと聞いてから、いてもたってもいられなくなった。
千里さんの努力の意味を、なんとかして認めてもらいたかった。方向性の違いで溝が深まるなんてあってほしくない。
「茶会が終わって、資料を作る時間はありましたし、客観的なデータがあった方が納得してもらえるかと思ったので、つい……大旦那様は、怒っていましたか?」
「いや、感心していたよ。『営業でもないのに、あんなに熱のこもったプレゼンをされるとは思わなかった』って。『結果を出せるなら、好きにやってみろ』だってさ」