カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 そのセリフに、表情が明るくなる。

 つまり、美澄屋を安売りしているという認識は撤回されたという意味だろう。大旦那さまにちゃんと理解をしてもらえたんだ。

 胸に安心感が広がった。


「ありがとう。俺を支えてくれるのが君で、本当によかった」


 じんわりと目頭が熱くなる。

 着物の知識も接客も、毎日学んでも彼に追いつくのは遠く先の話で、今のままではなんの力にもなれないと思っていたけれど、少しでも役に立てたのなら、これほどいいことはない。

 わずかに顔を向けると、整った顔が至近距離に見えた。

 肩に寄りかかったまま後頭部を引き寄せられ、触れるような口づけをされる。

 柔らかくて甘くて、優しいキスだ。

 唇が離れても余韻に浸る私に、艶っぽい表情をした彼は髪型を気づかいながらも頭を撫でた。そこからは、今まで通りの他愛のない会話が続く。

 船が停泊場に戻る間、日常とは少し違う、ふたりきりの幸せなひとときが続いた。

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