カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「ごめん。少し出てくる」
「今からですか?なにか緊急のお仕事でも?」
「いや、心配しないで。大丈夫。……もしかしたら、帰るのが遅くなるかもしれないから、先に寝てて」
千里さんは多くは語らず、素早く身支度を整えて家を出た。
最近では徐々に仕事を任されはじめ、本店での作業も事業の悩みもなんでも教えてくれる。彼の言う通り、トラブルが発生したわけではなさそうだった。
でも、あんなに険しい表情を見たのは初めてだ。
一体、誰からの連絡だったんだろう?プライベートの時間にわざわざ出向くなんて、よっぽどの理由に違いない。
帰ったら詳しく話を聞こうと待っていたが、結局その日、日付が変わっても千里さんは家に戻らなかった。
連絡もなしに外泊するなんて、今までなかったよね。まさか、どこかで事故に巻き込まれたんじゃ?
そう思ったが、翌日本店への出勤は予定時刻通り顔を見せたそうで、ほっと胸を撫で下ろす。彼は一日出先で仕事をする予定だったため、休憩を見計らって連絡を入れた。
『昨日は、知り合いと飲んで潰れちゃったんだ。連絡できなくてごめん』
返ってきたのは予想通りの反応だった。
付き合いもあるだろうから深追いするつもりはないが、潰れるまで飲むなんて珍しい。