カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
何度かやりとりをして会話は終わった。スマートフォンをポケットにしまい、息を吐く。
昼休憩をとろうと美澄屋を出ると、可愛らしい女性の声が耳に届いた。
「桃さん」
振り返ると、華奢なシルエットが視界に入る。
紫陽花柄の上品な着物を身にまとっているのは、美冬さんだ。思わぬ来客にドキリとした。
「お久しぶりです。この前の茶会ではお世話になりました」
「いいえ。こちらこそ。急なお誘いなのに引き受けてくださってありがとうございます」
「えっと、千里さんに用事でしょうか。すみません、今日は一日店には戻らない予定でして」
すると、美冬さんの紅を引いた唇が緩く弧を描く。
「いえ、本日は桃さんにお会いしたくて来たんです」
「私ですか?」
「ええ。お昼がまだでしたら、ご一緒にいかがでしょう」
数分後、誘いを受けて入ったのは、テナントの中のカフェだった。
紅茶に口をつける彼女の考えが読めず、少し戸惑う。