カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 まだ、お互いをゆっくり知っていく最中だけど、彼のおかげで結婚に前向きになれた。ふたりで過ごす日常が当たり前になってきているのが嬉しい。

 いずれ籍を入れて本当の夫婦になって、歳をとっても、あの広い日本家屋の縁側で四季の移り変わりを眺めながら、並んで和菓子を食べる姿が想像できた。

 すると、美冬さんはわずかにまつ毛を伏せる。


「じゃあ、千里はどうかしら」

「千里さん、ですか?」

「えぇ。あなたが幸せでも、千里は違う」


 想像していなかったセリフに、体がこわばった。敵意のこもったような声は、身震いするほどだ。

 一気に空気が張り詰めて、動揺が走る。


「どういう意味です?」

「言葉の通りよ。千里は、好きでもない相手と結婚する羽目になって、今も苦しんでいるの」


 彼女は引く気配がない。本心から言っているようだ。

 得体の知れない不安感が足元から迫ってくる気がした。

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