カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
センリさんの手元で、小さく氷の音がした。
グラスに軽く口付けた彼は、泣いている子どもをあやすように続ける。
「ずいぶんと強引な話だね。飲みたくなるのもわかるよ。でも、美澄屋に嫁げば将来は安泰だろう?会ってみれば、気に入る男かもしれないし」
「それは、ないと思います」
ぴくんとセンリさんの動きが止まった。
言葉を選んで告げていた穏やかな表情から、急に心から興味を惹かれた様子で目を細める。
「それはどうして?悪い噂でも聞いた?」
「あ、いえ。私が、恋愛のできない体質だからです」
首を振って否定した後、おずおずと続けた。
「好きな人ができても、両親に別れさせられてばかりで……恋というものに期待をするのはやめたんです。どんなに素敵な男性でも、周りに無理やり決められた人なんて、心から愛することはできないと思います」