カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
ずっと、影のまとわりついた恋愛をしてきた。必ずくる別れに怯えて、天沢家の名に振り回されて生きてきたのだ。
お見合いの相手が、優しくて真面目な理想の男性だったとしても、純粋な恋心を抱ける気がしない。
これは、いわゆる政略結婚。向こうの若旦那だって、好きでもない女と結婚させられる羽目になって迷惑しているかもしれない。
望まれていない相手に嫁ぐなんて、幸せになれないのが目に見えている。仮にも、旦那となれば一生連れそう相手だ。まだ正式に籍は入れていないにしろ、自分の意思で選びたかった。
「好きな人と結ばれたいと思うのは、そんなにいけないのでしょうか」
無意識に本音が漏れて、はっとする。
しまった。話を聞いてくれることに甘えて、愚痴ばかりこぼしてしまった。
センリさんは、本来楽しくお喋りするためにここへ来たはずだ。たまたま声をかけた女が、こんな暗い話ばかりしていたら気分を悪くするだろう。
「ごめんなさい。つい、色々と話してしまいました。私はお気になさらず、他の方とお話してきてください」
ぎこちない笑みを浮かべて告げたとき、カウンターの上に置いていた指に、大きな手が重ねられた。
優しく握られて、予想外の仕草に息が止まる。
「よし、おいで」
指を絡め、手を引かれた。席を立った彼は、ニコリと色っぽく口角を上げたのだった。