カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
いつもよりも語気が強い。感情を表に出さないが、完全に怒っているようだ。
美冬さんは動揺したままうつむいて、黙り込んでいる。
そのとき、芯の通った低い声が和室に響いた。
「俺が愛しているのは桃だけだ。美冬のことは、出会ってから今まで、女としてみたことは一度もない」
容赦のない一言が言い放たれる。
大きな瞳が強い衝撃を受けて見開かれ、失意に揺れていた。彼女は、受け止めきれない想いが溢れるのを堪えている。
千里さんは、美冬さんとふたりで会って話すと告げると、自分も行くと言って都合をつけてくれた。
彼の発言から、美冬さんの嘘が暴かれて、彼女がなにも言い返せないことがなによりも真実を明白に物語っていた。
このふたりは、付き合ってなどいない。ましてや、ホテルに泊まった過去もないのだ。
そして、この件には他に関わっていた人物がいる。
すると、外から聞き覚えのある凛とした声が耳に届く。
「もう観念しろ、美冬」