カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
鳴海くんは、表情ひとつ変えずに彼女を見た。
「協力した時点で俺も同じところまで堕ちてんだ。別に、謝りにきただけじゃない。あんたの婚約者として、こっぴどく振られるのを見にきたんだよ」
涙を堪えながら眉を寄せる美冬さん。
言葉だけを聞けばひどく冷たいが、鳴海くんの声のトーンは鋭いものではない。この状況で庇われるのが一番みじめだという彼女の心情を察しているのだ。突き放すつもりもないらしい。
やがて、彼女はわずかにうつむいた。
きつく目を閉じた後、まっすぐ私に向き直る。
「ごめんなさい。私は、千里とはなんにもない。ずっと、私が好きだっただけなの。……本当に、ごめんなさい」
震える声に、胸が苦しくなった。
きっと、美冬さんは純粋に幼なじみを想っていただけなのだ。私だって、美冬さんの立場なら急に婚約者が現れて嫉妬するに決まっている。
少しだけでも自分を見て欲しいと願う気持ちは覚えがあった。
千里さんと美冬さんが深い仲だと言われたとき、どうしても認めたくなかった。私だけを愛してほしいと思ったのだ。