カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 しかし、同情するつもりはない。

 大好きな幼なじみを奪われたと思う気持ちはわかるが、泣きそうな彼女に謝るのは違うと思った。

 染森家は美澄屋の上顧客なので今後も付き合いはあるのだろうが、相手の気持ちを考えると、これからは仲良くしようとも言い出せない。


「これ以上責めたりはしません。今までの件は、全部水に流しましょう。私が言えるのは、それだけです」


 視線を逸らさずに言い切る。

 千里さんは黙って様子を見守っており、事を荒立てるつもりはないようだった。


「美冬」


 千里さんに声をかけられ、美冬さんが顔を上げる。


「桃を傷つけたことは許さない。今後、俺からは一切連絡を取らない。でも、幼なじみとしては、お前と縁を切るつもりはないからな」

「千里……」


 私を心配させないようにはっきりと伝えた上で、美冬さんの気持ちも汲んでいるようだ。

 もう不安はない。

 千里さんにとって美冬さんは大切な幼なじみであり、その繋がりを捨てさせようとも思わない。

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