カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
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「すみません、お仕事があるのに。時間は間に合いますか」

「うん。資料の準備はしてあるし、美澄屋のテナントに向かうだけだから、移動に一時間もかからないよ」


 駅に向かう遊歩道を並んで歩く。

 土曜日の日中だが、栄えているところから離れているため人通りは少なく、夏の日差しを遮る木々がそよそよと風に揺れていた。

 汗ばむ八月だというのに手を離す気配がない。だが、嫌ではなかった。このまま仕事に行ってしまうのかと思うと、つい引き止めたくなる。


『俺が愛しているのは桃だけだ。美冬のことは、出会ってから今まで、女としてみたことは一度もない』


 あんなにはっきり言ってくれるとは思わなかった。

 店に来た美冬さんとのやりとりや証拠の写真について話したときも、真摯に聞いて偽りなく説明してくれた。

 茶会の着物の件で鳴海くんに目をつけていた千里さんは、彼からのに呼び出しに応えて裏の動きを探るつもりだったらしい。

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