カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
たしかに、軽い触れ合いはあるものの、決してキス以上を求められはしなかった。
てっきり、本気で愛し合っていない女性にはそういう気が起きないのかと思っていたが、気をつかってくれていたんだ。
甘い雰囲気になるたびに、若干の期待を抱いてそわそわしていた自分が恥ずかしい。
「不安にさせてた?」
立ち止まった彼が、片手で私の頬を撫でた。
ひどく優しい仕草に胸がときめく。
涼しげな切れ長の目がまっすぐこちらを映していて、お互いしか目に入らない。
解いた手に軽く抱き寄せられて、ほどよく筋肉質な腕が背中に回った。
この暑さは、夏のせいだけじゃない。
体中の神経が彼に向いている。
「好きだよ。俺は、君しか見てない」
耳元でささやかれた声に思考がとろけた。
「穏やかで芯が強くて、いつも味方になって支えてくれる桃が好きだ。家同士の利益で決められた結婚なんて関係ない。俺が妻にしたいのも、触りたいと思うのも、桃だけだよ」