カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


「展望台に来るのは初めて?」

「はい、初めてです。すごい……綺麗」


 語彙力をなくして、安易な感想しか出てこない。初めての夜景を目に焼き付ける。


「百万ドルの夜景ってよく聞くけど、ここからの眺めもいいでしょう?たまに無性に見たくなって来るんだ」

「本当に素敵です。こんな場所があったなんて知らなかった」


 感動に打ち震えていると、隣から柔らかな声が耳に届く。


「少しは気分が晴れた?」


 ドクンと胸が音を立てた。こちらを見つめる目と視線が重なった。

 もしかして、元気付けるためにわざわざ連れてきてくれたの?

 初対面なのに、嫌な顔ひとつせずに私の話を聞いて、優しくエスコートしてくれた。穏やかで、一緒にいて落ち着ける。こんな男の人、今まで会ったことがない。

 美しい夜景と、理想的な男性。夢のようなひとときにうっとりする。

 しかし、頭をよぎるのは見合い話を進めようとする両親の顔だ。今後は、こんな風に家を抜け出して夜景を見る機会もないだろう。

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