カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
お互い、イケナイコトだったと理解していた証拠だ。他の男との跡を見られたら見合いどころではなくなると配慮してくれたのだろう。
センリさんと会えてよかった。もう二度と顔を合わせる機会はないけれど、あの甘い夜は、私が初めて自分から求めたひとときだった。
その思い出を胸に、生きていける。
そして、桃が咲き始める三月上旬、ついにお見合い当日となった。
皮肉にも、会場はベリーヒルズビレッジのテナント屋上にある日本庭園だ。禁忌を犯した記憶がちらつくのを押し込めて、新品の袷をまとって指定の部屋に向かう。
もともと見合いに備えて新しい着物をあつらえる予定だったのだが、美澄屋の若旦那から「ぜひ、ウチの着物を着てほしい」と送られてきたのだ。
採寸を伝えていたからか、サイズはぴったり。
綺麗に赤く染め上げられた袷は袖を通すだけで気分が引き締まるほど美しく、ただでさえ高い着物をぽん、とプレゼントしてくれるなんて、乗り気ではない自分にはもったいないと感じた。