カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


「鳴海くん。あれは何をしているの?」

「あぁ。あそこは薄地色の染めモノを置いているので、こまめに光を調節しないと蛍光灯に当たった部分だけ変色する“ヤケ”を起こすんですよ。着物の品質管理は特に気をつけないといけないですから……まぁこれも全部、美澄さんからの受け売りなんですけどね」


 店内をよく見ると、蛍光灯をわざと半分減らしていたり、品物の柄や色を季節の彩りを感じさせられるように工夫しているのがわかる。

 反物の置き方を見ても、年配の方でも無理なく選べる高さや距離を考えているようだ。

 お客さまへの見せ方ひとつを丁寧に心がけているディスプレイは、千里さんがこだわっている点らしい。

 美澄屋そのものが、若旦那のプライドをかけて作り上げた空間なのだ。


「お姉ちゃん、今、なんて言った?」


 そのとき、ふと、近くの従業員が声をかけられていると気がついた。

 若い女性店員は新人のようで、男性客は五十代半ばだ。


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