カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 接客中というよりも一方的に絡まれているといった構図に近い。男性は手に小さな缶ビールを持っていて、頬も少し赤かった。


「ですから、ご飲食の持ち込みはご遠慮いただきたく……」

「あぁ?出て行けっていうのか?俺は客だぞ」


 距離をとったところにいても鼻につくタバコの匂い。酔っ払っている様子を見ると、客じゃないのは明白だ。

 興味本位で入ったが、店員に注意をされて逆ギレしたのだろう。

 すると、勢い余って男性の缶からビールがこぼれ、彼の胸元にビチャリとかかる。


「あっ、冷てえっ!あんたのせいで服が濡れちまったじゃねえかよ。どうしてくれんだ、クソ!クリーニング代を寄越せ」


 なんて理不尽な人だ。

 女性店員は、恐怖のあまり顔が青ざめている。


「まずいな。すみません、俺ちょっと行ってきます」


 鳴海くんが駆け寄ろうとしたそのとき、ふたりの間に割って入ったのは、千里さんだった。


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