カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「先ほども申し上げたとおり、商品の品質を保つため、飲食物の持ち込みは禁止です。見たところ、缶の中にはまだアルコールがある上に、お客さまは喫煙なされたばかりのよう。着物はとても繊細なので、匂いにも敏感です。また、万が一酒がかかって変色をしたら民事上の責任を負っていただきます」
「ぐ…ぅっ!」
誠実ながらも迫力のある語気に、言葉を詰まらせる男性客の顔は引きつっている。冷静な表情の若旦那は、トドメを言い放った。
「あなたの行為は場合によって威力業務妨害にあたる可能性がありますので、これ以上の騒ぎを起こすようなら、警備員を呼ばせていただきますが」
「ちっ、うるせえなあ!わかったよ、二度と来るか、こんな店」
男性客は、決まりが悪そうにそそくさと店を出る。
見送った千里さんは若干眉を寄せた後に小さく息を吐いて、クレームを受けた女性店員や、他の客に穏やかな表情で声をかけていた。