カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
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「わぁ、素敵……」


 連れてこられたのは、隠れ家的な居酒屋だった。木造の古民家をリノベーションした外観で、都心とは思えない趣が漂っている。

 店内はとても広々としていて、カウンターの上は吹き抜けになっていた。太い柱や梁が張り巡らされているのがわかり、風情のある旅館に近い雰囲気に胸が躍る。

 個室を予約してくれていた彼は、慣れた手つきでメニューを広げた。

 薄暗い部屋が淡い提灯に照らされていて、彼の濡れたような漆黒の髪と品の漂う佇まいがよく映える。

 身にまとう小紋の着物は、プライベートでちょっとお出かけする用らしい。着物はどれも高いイメージだったが、格式高い場に合うものから普段使いができるものまで色々あるようだ。

 やっぱり千里さんは和の雰囲気が似合う。ご飯に行くなら、私も合わせて和装すれば良かったかな。

 そわそわと考えていると、目の前で形の良い唇が弧を描く。

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