カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


「食べたいの決まった?」

「あ、いえ。どれも美味しそうで迷ってしまって」

「和食も洋食も選べるようだね。いくらとウニがたっぷりな海鮮丼も惹かれるし、仙台牛のローストビーフもあるみたいだよ」

「海鮮……!」


 つい目を輝かせると、ぷはっと千里さんが吹き出した。子どもみたいな反応をしてしまって恥ずかしくなったが、彼はとても楽しそうだ。


「好きなの頼みな。夫婦の間に、奢りもなにもないだろう?」


 密かに値段を確認していたと気づかれていたようだ。スマートな気配りをしてくれる彼には敵わない。

 その言葉に甘えて注文をして、新鮮な海の幸に舌鼓を打つ。ふたりきりの空間で、なにげない会話が交わされた。

 やがて、ある話題が投げかけられる。


「今日美澄屋に来たとき、どう思った?素直な感想を聞きたいな」

「とても細部まで工夫されている素敵な空間だと思いました。でも、入るときは少し緊張した気がします」

「緊張?」

「はい。敷居が高いというか……ふらっと立ち寄れる場所だとは思っていなかったので」

< 49 / 158 >

この作品をシェア

pagetop