カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「食べたいの決まった?」
「あ、いえ。どれも美味しそうで迷ってしまって」
「和食も洋食も選べるようだね。いくらとウニがたっぷりな海鮮丼も惹かれるし、仙台牛のローストビーフもあるみたいだよ」
「海鮮……!」
つい目を輝かせると、ぷはっと千里さんが吹き出した。子どもみたいな反応をしてしまって恥ずかしくなったが、彼はとても楽しそうだ。
「好きなの頼みな。夫婦の間に、奢りもなにもないだろう?」
密かに値段を確認していたと気づかれていたようだ。スマートな気配りをしてくれる彼には敵わない。
その言葉に甘えて注文をして、新鮮な海の幸に舌鼓を打つ。ふたりきりの空間で、なにげない会話が交わされた。
やがて、ある話題が投げかけられる。
「今日美澄屋に来たとき、どう思った?素直な感想を聞きたいな」
「とても細部まで工夫されている素敵な空間だと思いました。でも、入るときは少し緊張した気がします」
「緊張?」
「はい。敷居が高いというか……ふらっと立ち寄れる場所だとは思っていなかったので」