カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 店内に置いてあるものは全て高級品で、自力で好みの着物を探すのも難しい。

 そのために専門の従業員がいて色々相談に乗ってくれるのだが、成人式の振袖選びの時にどんどんオプションがつけられて、とても高額なローンを組まされそうになった経験がある。

 小物が多く、一式揃えるには相当散財しなくてはならないとのイメージもあった。


「今まで着物を身につける機会は、どのくらいあったの?」

「うーん、七五三や成人式が思い出に残っています。友人と夏祭りに行くときは浴衣を着ていました」

「普段使いをする人はあまりいないよね」


 日常的に和装をする人に出会ったのは、千里さんが初めてかもしれない。着物離れという言葉もたまに耳にする。


「そうだ、レンタルをした経験はありますよ。京都へ旅行に行った時に、嵐山の近くで着物を借りて散策しました」


 美澄屋の着物は、質の高さと品格が売りだ。老舗の呉服店であるゆえに歴史がある。

 美澄屋で簡単に借りられるという印象はないため、あまり縁のない話かと思いきや、千里さんは真剣な表情で続けた。

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