カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「ふすまで仕切った隣は俺の部屋だから、なにかあったら呼んでね」
「わかりました。急にお邪魔してしまって、すみません」
「いいよ。むしろここに引っ越してくれば?広い家にひとりで住むのも寂しいし。窮屈な家を出たいなら、いつでも歓迎するよ」
ドキリと胸が鳴る。
そんな提案をしてくれるとは思わなかった。お世辞や冗談ではなく、本心から誘ってくれているようだ。
過保護とも呼べる両親にしつけられてきた私は学生時代から門限も厳しく、大人になってからもそれほど自由ではなかった。
バーであったときも、決死の覚悟で家出をして『帰りたくない』と言ったのを覚えているのだろう。言葉に甘えていいのなら、あの息苦しい家から出て暮らしたい。
彼は「ゆっくり考えて」と優しく目元を緩めた。
「あぁ、しまった。祖母の浴衣があったはずなんだけど、全部処分をしたかもしれない」