カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 そうぼやいて隣の部屋へ向かった千里さんは、桐たんすの中をあさっていた。

 ふすまの奥に見える自室に少しだけ興味を持って眺めていると、タオルなどを手にして戻って来る。


「この浴衣、俺のお古で悪いけど寝巻きで使って。あと、これがバスタオル。桃、お湯に浸かりたい?」

「あ、いえ。シャワーで大丈夫です」

「わかった。案内するから、先に浴びておいで」


 そうか、お風呂も貸してくれるんだ。泊まるなら自然な流れだよね。

 ひととおり説明を受けて別れた後、少し緊張しながら脱衣所で服を脱ぐ。髪や体を洗い終え、ほっとひと息ついてリフレッシュしたが、問題はその後だった。


「あれ。浴衣の着方はこれで合っているのかな……?」


 渡された茜色の浴衣は、思ったよりも難題だった。もちろん、旅館に泊まった際に浴衣を着た経験はある。

 しかし、帯を結ぶ段階で少し違うと気づいた。想像よりも袖付けが長く、帯が腰よりも下でないと結べないのだ。

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